星めぐりの道具箱

望遠鏡作り、双眼鏡、惑星撮影など

低摩擦の素材

高度軸と方位軸の回転の重さですが、塗装面(オスモカラーのカウンタートップオイル、原料は天然のオイルとワックス)の滑りがよいのでテフロン板と塗装面の組み合わせで試してみようと思っていました(18インチでは方位軸;テフロン板/ステンレス板、高度軸;テフロン板/川口技研の敷居すべり)。しかし24インチでは鏡筒が重い(80kgほど)ためか塗装面のみで組み立てるとやはり回転が重く感じました。

テフロンの相手素材としてエボニースター(米国Wilsonart 社 Ebony Star)という化粧板が推奨されており、米国のStellafaneのホームページにDobsonian Bearing Materialsとして紹介があります。しかしこれは現在は製造されておらず、代替品もあるのですが日本には輸入販売されておらず入手は難しいです。

国内で入手可能なものを探しに昨年新宿のアイカ工業のショールームを訪ねメラミン化粧板のサンプルを何種類かいただきました。双望会のお仲間に分けていただいた貴重なエボニースターの小片と比較したのですが滑りが少し重い感じです。もっと探せば見つかるかもしれませんが、

f:id:doortosky:20220321164408j:plainf:id:doortosky:20220321164312j:plain

その後百円ショップのダイソーで求めたポリプロピレンシート(PPシート乳白色両面艶消しタイプ)に試しにテフロン板を当ててみたら思いのほか良い滑りでエボニースターと比べてみても同程度に感じます。

写真のように双方ともある程度細かい凸凹がありさらに艶があるところが効いているようです。

f:id:doortosky:20220321164006j:plain

上:ダイソーPPシート、下:エボニースター(細かい目盛はmm)

 

方位軸

ロッカーボックスの裏側にダイソーのP.P.シートを両面テープで貼りました。

f:id:doortosky:20220321164930j:plainf:id:doortosky:20220321164956j:plain

サイズが335mm×500mmなので4枚で外径φ800mmの当たり面にしています。継ぎ目がテフロン板に当たってゴツゴツしないか気になりましたが組み立ててみると問題なく回ります。

高度軸

ダイソーのPPシートは透明なので下地が透けて見えます。見栄えを考えて下に銀色のPPクラフトシートを貼っています。(ホームセンターで求めた銀色のPPクラフトシートのみで作りたかったのですが、シボの違いでしょうか、滑りがダイソー製ほどよくありませんでした)。長さは1500mmほど必要なので幅35mmにカットした3枚のシートを継いでいます。両面テープで高度軸に接着しました。

f:id:doortosky:20220321171033j:plainf:id:doortosky:20220321171235j:plain

f:id:doortosky:20220321184044j:plainf:id:doortosky:20220321182905j:plain

 

組み立てて接眼近くを持って回してみました。高度軸のほうが方位軸より少し重いですが大分滑らかな動きになりました。ポリプロピレンシートの良いところは安価で入手し易いこともありますが、加工が容易です。カッターナイフやハサミで簡単に切れます。耐摩耗性が気になりますがまずは使ってみたいです。

18インチでは鏡筒重量は約38kgでしたが、24インチでは80kg近くになりました。18インチでは軽く動いたものが倍近い重量増のため同じ材質の組み合わせでは難しい感じがします。

光軸ずれの確認

昨夜、スパイダーの羽根の厚さを1.2mmに増したので姿勢差による光軸ずれがどの程度か確認しました。

f:id:doortosky:20220208201901j:plainf:id:doortosky:20220208201940j:plain

    高度20°程度           高度80°程度

羽根の厚さ0.3mmの場合よりもずれは大幅に小さくなりました。微妙なずれはあります。フォーカサー取り付け部にかかる負荷の方向が変わるためかもしれませんが大分良くなりました。振動も収まりましたが、スパイダーで生じる回折の光条は明るい星ではっきり出ます。

f:id:doortosky:20220208202841j:plain

光軸はとりあえずレーザーコリメーターで合わせた状態です。ファインダーも取り付けて初めて上弦に近い月とリゲル(伴星が見えました)、シリウスを見ました。真冬のお天気で気流がひどいです。副鏡ケージをアルミ材で作りましたが手で触ると冷たい!、木の取っ手をつけたくなります。

スパイダー羽根の作り直し

1月2日のファーストライトの記事に記しましたが、高度角を変えた際に厚さ0.3mmのスパイダーの羽根で光軸ずれが生じたので羽根を作り直しました。厚さは1.2mm(材料SUS304)にしました。梁のたわみ量、ねじれ角はその厚さの3乗に反比例するのでずれの原因がスパイダーの羽根にあると考え厚さを4倍にすれば1/64になり、ほとんど目立たなくならないかと期待します。

羽根の重さですが4枚で580g(塗装後590g)。できるだけ軽くしたいところですが、0.3mm厚の場合よりも435g重くなりました。

f:id:doortosky:20220203204001j:plain

羽根が厚くなり振動の収まりも良くなりました。

f:id:doortosky:20220203204035j:plain

車の補修用塗料で下塗りを加えました。

f:id:doortosky:20220203204114j:plain

黒板用の黒色艶消し塗料で上塗りしました。

副鏡オフセット量

副鏡の配置ですが、周辺光量を配慮し図のように副鏡の中心(楕円の中心)を主鏡の光軸から少しずらした配置にしました。現状のオフセット量は7.5mmで製作しています。望遠鏡製作の本やネット上には参考になる計算式がいくつか載っていますが、望遠鏡製作のバイブル本として、Jean Texereaw著の「How to Make a Telescope」という本がとても参考になります。この中には放物面鏡の深さまで配慮した計算式が載っています(第2版、P376)。この式で計算するのが正確と思い副鏡オフセット量を計算し直してみました。

f:id:doortosky:20220129152444j:plain

式は以下になります。

各記号の意味と計算に使用した値(単位mm)は以下です。

a:副鏡短径、Δ:副鏡オフセット量、D;主鏡有効径(604)、f:主鏡焦点距離(2433.32)、d:主鏡焦点位置での像径(20)、l:焦点引き出し量(430)、e:主鏡の中心の深さ

まず主鏡の凹み深さeを求めます。(D/2)^2/4f に数値を代入してe=9.3703mm、この値を以下の式に代入してaとΔを求めました。

a=L/M+L/N 、Δ=(L/M-L/N)/2

ここで L=d(f-e)+l(D-d)、M=2(f-e)-(D-d)、N=2(f-e)+(D-d)

e=r^2/2R   =(D/2)^2/4f

・副鏡の短径、a=125.4mm

・副鏡のオフセット量、Δ=7.55mm

 

この値からすると短径が少し足りません(現状の有効は122.5mm)。

焦点位置での像径を15mmにして計算し直してみました。

・副鏡の短径、a=121.3mm

・副鏡のオフセット量、Δ=7.37mm

 

像径の値によって微妙に変わります。

 

 

 

主鏡側面の押さえ

主鏡側面の押さえですが、フェルト付きのアジャスターボルトを取り付けていました。ネジと一緒に回ってしまうのと厚さがあってケーブルで吊る側の2カ所には設けられないのでチャンネル材にコルク板を貼って回り止め構造にしたものを自作しました。組立・輸送時には4カ所で押さえて鏡が動かないようにします。観望の際には当てる程度にして位置を決め、鏡に圧迫を加えないようにする考えです。

f:id:doortosky:20220130162122j:plain

90°間隔で4カ所に設けました。

f:id:doortosky:20220130162157j:plain

主鏡の面取り部で押さえる半円形の抜け止めは少し削って直に接しない寸法にしました。下側の2カ所はケーブルを介して、上側の2カ所は直に主鏡側面を押さえます。

f:id:doortosky:20220130162511j:plainf:id:doortosky:20220130162528j:plain

押さえ部品の構造です。加工の容易な真鍮製のM8ボルトの中心にM3のタップ穴を加工し、皿ねじでチャンネル材の部品を隙間を設けて回転自由に固定しています。この上にコルク板を貼っています。

 

ファインダーの取り付け

ファインダーには18インチドブソニアンで使っている 8x50mm 正立像のものを流用します。鏡筒が丸筒だと都合良く傾くのですが、フォーカサーボードに取り付ける際にそのままだと接眼部と重なってしまうので30°傾けるための台座を作りました。ファインダーを覗く際に高度の高い天体では不利かもしれません。

f:id:doortosky:20220118180901j:plain

写真で見ての通りですが、アルミのチャンネル材(60×30×t3)を斜めに切り落として工作しました。

f:id:doortosky:20220118181729j:plain

f:id:doortosky:20220118182613j:plain

ファインダー取り付け部はビクセン製のアリ溝台座です。

ファーストライト

明けましておめでとうございます。昨年末のクリスマスには米国のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James Webb Space Telescope)の打ち上げが成功しました。これからサンシールドの展開、口径6.5mの主鏡の展開など複雑な工程が続きますが、どんな新しい発見が成されるのかと想像するとわくわくします。

24インチファーストライト、昨年末までにと思っていましたが、昨日やっと無風の快晴に恵まれました。ここまでは良かったのですが、星像はヒョウタン形に歪んでいて他にも問題が続出です。

f:id:doortosky:20220102114740j:plain

ファーストライトは木星

f:id:doortosky:20220101221855j:plain

組立てた状態で初めて主鏡カバーを外しました。

 

f:id:doortosky:20220101222021j:plain

接眼部の反対側には遮光と光軸出しのために仮の遮光板を取り付けました。

 

f:id:doortosky:20220101222442j:plain

主鏡運搬箱はミラーボックスの裏側から4隅をつまみ(ねじ)で固定しました。

 

f:id:doortosky:20220102100013j:plain

高度軸のテフロン板は面積を増やし(36mm×115mm 4箇所)ました。回転は少し軽くなりました。

 

ファーストライトで問題続出

1.星像がヒョウタン形に歪んでいる。

 とりあえず約130倍のアイピースを使いました。ファインダーがないので明るい木星の導入にもひと苦労。焦点位置はほぼ合っています。ありゃ、りゃ、ファーストライトの木星、縞が数本見えますがぶれたように2重に見えます。4隅に設けた抜け止めが主鏡を圧迫?

f:id:doortosky:20220102101707j:plain

下側2カ所には発泡ゴム板でワイヤーケーブルの抜け止めを設けたのですがこれが影響?、副鏡の裏側の綿の詰めすぎ?、いろいろ考えられますが主鏡支持構造から確認と思います。18インチドブソ二アンではナイロンベルトで主鏡を吊りましたがファーストライトは順調でした。24インチの主鏡は41mm厚でかなり薄いので圧迫の影響が出やすい?、ミラーボックスに主鏡運搬箱を組み込む構造にしましたがこれが問題となると大きな構造変更が必要かもしれません。

2.光軸ずれと副鏡の振動

 姿勢差による光軸ずれの確認をレーザーコリメーターで行いました。

f:id:doortosky:20220102104332j:plainf:id:doortosky:20220102104356j:plain

始めに20°ほどの低い姿勢でレーザーのスポットを主鏡センターに合わせ鏡筒を天頂近くに向けると数ミリずれてきます。副鏡がスパイダーに対して片持ち構造なので構造上と思いますが大きすぎます。羽根の厚さ0.3mmは薄すぎたようです。反対側にカウンターウエイトを設ける案もありますが現実的ではありません。AstroSystems社のホームページには短径5インチ斜鏡用の羽根は厚さ0.048"(約1.2mm)とありかなり厚くなっています。もうひとつは振動です。こちらも予想されたことですが光軸回りの振動が出やすくなかなか収まりません。残念ですが羽根を厚くする必要がありそうです。

3.回転の重さ

 高度軸、方位軸廻りの回転の重さ、実用できますがもう少し軽くしたい。

4.スペース

 これが一番大きな問題。実際に形になると、小さな我が家のベランダには大きさがものすごい。組立て分解も大変、観測室が必要な大きさです。