星めぐりの道具箱

望遠鏡作り、双眼鏡、惑星撮影など

CARL ZEISS 8x40 DELTAR 双眼鏡の分解、清掃 その1

8x40 DELTAR、今から90年近く前、1937年にカール・ツァイスから発売されたこの双眼鏡は画期的な超広視界と非球面レンズの採用で有名です。入手したものは片側のプリズムに大きなクラックが入っており、この双眼鏡の単眼鏡タイプ (DELTARMO) からプリズムを取り外して交換修理することにしました。当時のプリズムの固定は金枠に加締めて位置を決めるものが多くはめ込む側のサイズが大きい場合には対処が難しくなります。この双眼鏡のシリアル番号は162~となっていますが、この番号から調べると1932年製となり発売の5年前になるので不思議です。

DELTARMO 8x40(外観はかなり傷んでいます)

 

当時のカタログを見ると「特殊高角鏡」とあって呼び方が興味深いです。「羽根のように軽い」を推していて、従来のアルミニューム合金よりも軽い特殊軽金属を使用して重量を約40%軽減したとあります。この軽合金は腐食には弱いようで対物レンズの飾り環が腐食して膨らんでいました。片側は取り外す際に少し欠けてしまいこれも単眼鏡から取り外して交換と思います。

飾り環とレンズ室の間には黒いアスファルトピッチのようなものが充填されていてレンチでしっかり回さないと緩みませんでした。

対物レンズ室と充填されていたピッチ状のもの、ライツの充填物に比べて黒く、ライツのものほど粘りはありません。

部品は左右に分けて整理、対物部を取り外したボディー

左側鏡筒のプリズムのクラック、これだけ大きいと視野に影響します。

 

接眼側の分解には苦労しました。

矢印の先にあるテーパーのついた接眼視度目盛環を外さないとこれが抜け止めになっているので接眼部をボディーから外せない構造です。接眼レンズの分解清掃もできません。この部分は逆ねじでローレット金物に嵌っていて接眼レンズを繰り出した際に緩まない構造になっています。一か所Φ1mmの穴が開いているのですが、この穴のほかにはつかみどころがありません。メーカーでは専用工具を準備しているのだと思います。浸透性の油(DW-40)を外側から染み込ませてゴム板を挟んだレンチで何度かやってみたのですが全く緩まず、ヒートガンで少し温めても緩まず、1ミリ厚ほどの巻きつけられる半割の金物を作りΦ1mmの穴を開けてΦ1mmアルミ線を差し込んで穴に引っかけてレンチで挟んで緩めようとしたらアルミ線がブチ切れてしまいました。頭を冷やして考え直してみました。

これまで目盛環の外側からWD-40を何回も浸していたのですが、内側から注油すれば逆ネジ部に油が回ってくるはず!

まずベークライト目当てのねじ部に注油し、目当てを外しローレット金物の外周3か所のセットビスを外して、金物を引き上げて目盛環のネジ部の裏側から接眼レンズに油がかからないように注意して注油しました。半日ほど置いてアメゴム輪を挟んだレンチをグイっと回したらあっけなく外れました。

アメゴム輪を挟んでレンチで視度目盛環を挟み、ローレット部をキャップオープナーで挟んでいます。

この部分の構造は当時のIF双眼鏡では一般的なものです。考えてみると当たり前ですが、ねじ溝に油が染み込むように「内側から注油」が要でした。そこまでは良いのですが、接眼レンズの周縁にカビ痕があります。非球面の部分のようです。きれいに取れるとよいのですが。

接眼部のヘリコイドねじにはWD-40が染みてはいますが製造当時のグリースがしっかり残っています。

外れた接眼視度目盛環、ローレット環、目当て。

 

 

 

2023/6/14  梅雨前の土星

明日は夏至、いよいよ遅い梅雨入りのようですが、6月14日には前日の夕方からよく晴れたので望遠鏡をセットして夜中の2時過ぎに起きて今シーズン初めての土星を撮りました。昨年の今頃はカシニの間隙がしっかり見えていたのに環の傾きが小さくなってすっかり細く寂しくなりました。

Saturn    2024-06-13-1828_1 (UT)  Seeing: 5/10   Trans:3/5

 CM I 127.4° CM II 279.1° CM III 242.5°   

24” (effective aperture 600mm) f4 Newtonian (Dobsonian)  5x Powermate ZWO ASI585MC   ADC  (with Baader UV/ IR cut filter)  14.7ms, 60sec x4 50%frames stack (derotation 4 images)                                                                                                                      

2024-06-13-1850_6 (UT)  Seeing: 5/10   Trans:3/5

 CM I 140.6° CM II 291.8° CM III 255.1°     

24” (effective aperture 600mm) f4 Newtonian (Dobsonian)  5x Powermate ZWO ASI462MC   ADC  IR (with Baader IR-pass 685nm filter)  14.7-ms, 60sec x4 50%frames stack (derotation 4 images)   

 

24インチ望遠鏡で星雲、星団を初観望

北茨城の公園に24インチドブソニアンを運び初めて星雲、星団を観望しました。大きく重いです。重い部品は主鏡運搬箱が27kg、ロッカーボックスが20kgです。これらを家の屋根裏から狭い階段で1階まで降ろすのが大変でした。車(ホンダのシャトル)には荷室前側にグランドボード、ロッカーボックス、ミラーボックス、下トラス枠を重ねて、バックドア側に主鏡入りの主鏡運搬箱、その上に保護用の緩衝材、さらに副鏡ケージ、上トラス枠を重ねました。脇には高度軸の半円板と脚立を置きました。これでほぼ満杯状態、助手席側には運搬用の台車を載せたので余裕はほとんどありません。その他の荷物は適当に隙間に詰め込み、赤道儀プラットホームは載せていません。

 

今回はシュラウドを取り付けたので鏡筒の高度軸回りのバランスが厳しくなり8x50mmファインダーの代わりに軽いドットサイトを使用しました。ミラーボックスの背面にはカウンターウエイト2.5kgを4個(合計10kg)を取り付けています。バランスは、この状態で長焦点の重いアイピースにも対応できました。

鏡筒が水平より下に向かないように耳軸裏側の端には制限を設けました。主鏡の抜け止めを運搬箱の4隅に設けていますがこれで安心です。

明るい間は薄雲が広がっていましたが夜には晴れ間も広がりM13、M4、M27、M51、M57、M16、M17、M8、網状星雲など楽しめました。18インチとの差を感じました。M57の中心星は、はっきりと確認できず課題です。

 

夜露がひどく雷雨の可能性もあったので夜半にはカバーをかけて寝ました。全体用のカバーをほしいのですが、鏡筒にはタイヤ用のカバー、ミラーボックス側にはブルーシートをかけています。

 

 

ERNST LEITZ 8x30 双眼鏡の分解、その3

右接眼鏡筒にはレチクルが入っています。レチクルを入れた金物を鏡筒にねじ込んで光軸方向の位置調整をしているようですが緩まなかったのでそのままの位置にしています。距離としては無限遠ではなくある程度の近距離に合っています。

レチクルは真鍮製の鏡筒に収められているのですが地肌がそのままで黒色処理はされていません。

レチクル絞りの径はΦ15.8mmで、レチクルの入っていない左鏡筒の視野絞りの径はΦ18.8mm、右鏡筒の視界が狭くなっているのは残念です。無理をして入れた感じがします。

左鏡筒の絞り径18.8mmと実視界が1000mで150mというカタログデータから対物レンズの焦点距離を計算してみると凡そ125.3mm(f 4.2)、接眼レンズの焦点距離は15.6mmなのでルーペとしての倍率は16倍となってかなりの高倍率です。左鏡筒には厚さ0.5mm(t0.05+t0.01+t0.3)のスペーサーが対物レンズ室と対物レンズ鏡筒の間に入っていました。

 

 

対物レンズ室に入っていたスペーサー厚さt0.05、t0.15、t0.3

レチクルは横方向に50~0~50の目盛、縦方向には30~0~30の目盛です。レチクル鏡筒をボディに固くねじ込み止まる角度ですが、眼幅62mmくらいでレチクル目盛の水平が出て、なぜか双眼鏡を普通に構えた位置で180度(裏像ではない)ひっくり返った状態で入っています。レチクル自体を外せないのでゴミが目立たないように拭き上げるのは大変でした。どうしてもいくつかは残ってしまいました。

全ての部品を組み上げて見た景色は90年前に作られたものとは思えないくらいの透明感と高解像でした。特に中心像は美しく繊細です。

 

 

ERNST LEITZ 8x30 双眼鏡の分解、その2

その後、対物レンズ鏡筒を分解しました。ボディーからのレンズ鏡筒の取り外しは容易でしたが、鏡筒から対物レンズ室の取り外しには苦労しました。

上左から飾り環、対物レンズ鏡筒(右鏡筒)

下左から対物レンズ室押さえ環、偏心環、対物レンズ室

対物レンズ室の偏心環構造、油土を清掃して押さえ環を外したところ

芯だしのためにレンズ室は偏心環構造になっているのですが、偏心環の位置を最も偏心量の少ない位置に回さないとレンズ室側面の段差が引っ掛かりレンズ鏡筒から外れない構造です。まず押さえ環を外して偏心環の位置をずらさないといけませんが、油で固着していて位置をずらすのは簡単ではありませんでした。専用工具を作るとよいのですが、簡単ではなく、すり割りが一か所しかないリングを回して固定するのに手間取りました。

 

対物レンズはアルミ合金製のレンズ室にレンズ室の端部周縁を加締めて固定されています。分解作業のための油が染みたためか、原因はよくわかりませんがレンズ内側周縁の表面が少し青ヤケしていました(右側対物レンズのみ)。

接眼レンズもそうですが、加締めによる構造が多用されています。軽量化のためでしょうか、各部は薄肉でとても精密に加工されています。対物レンズ鏡筒の遮光筒は茶色っぽい色をしていますが厚さは0.3mmしかありません。内側は黒塗りされていましたが清掃の際に少し剥がれました。

 

右側の対物レンズ鏡筒、遮光筒(厚さ0.3mm)

 

プリズムですが左鏡筒は曇りやカビは無くそのままにしました。右鏡筒は2個のプリズムが重なる間の面にわずかのカビがあって対物側に取り付けられているプリズムを外して清掃、透過光ではほとんど見えない程度、反射光で見ると痕跡が分かる程度に清掃できました。接眼側のプリズムは固く嵌っていたので無理に外さず(側面を加締めて固定しているので破損が怖い)そのまま清掃しました。

 

右鏡筒の接眼レンズですが、視度調整のためのねじがひどく固着していて何度も温めたり油を浸透させたりしたため油がまわってしまいました。中性洗剤では固着した油がとれずシンナー(油性の溶剤はお薦めできませんが)も使って拭きとりました。左鏡筒の接眼レンズはきれいな状態のため分解せず前後のレンズ表面を拭いただけです。

2-2-2の3群6枚レンズの構成ですが対物側からの2群は側面を見ると断面図のように2枚貼り合わせ構造であるのがわかります。接眼側の1群2枚レンズは金枠に加締めてあり外せませんでした。

 

組みあがった右側接眼レンズ、対物側は凹面、眼側は凸面です。

 

右側接眼レンズと視度目盛環、目当て、羽根、固定環

左右の接眼レンズと羽根、焦点調整ねじ軸

ERNST LEITZ 8x30 双眼鏡の分解、その1

2月から家の改修工事のため仮設の足場に囲まれて落ち着かない生活です。双眼工房のページに古い双眼鏡の記事を書いてきましたがブログに続けていきたいと思います。この双眼鏡は戦前のもので8x30の広視界タイプ、右眼にはレチクルが入っています。素直でシャープな像ですが、光学系にカビと曇りがあるので分解・清掃をすることにしました。機種名の表記がなくレチクル入りなので軍用タイプと思われますが、当時の日本語カタログ(1935年9月)を参照するとBinuxit(ビヌキシート)という機種と形状が同じです。価格は185円とあり当時の大卒初任給は70円程度だったようなので現在の価格に換算するとかなり高価なものです。視界は1000mにて150mとあり約8.6度に相当します。見かけ視界70度近い広視界双眼鏡です。

 

古い双眼鏡の光学系の清掃は分解に一番手間がかかります。分解はマニュアルもなくパズルのようなもので面白い、急がないことと根気が必要です。現在は気密構造には、Oリングを使用する場合が多いですが、戦前のものでは油土やアスファルトのようなものが充填されている場合が多く、これが固着していると簡単には分解できません。

この双眼鏡も対物レンズ側の飾り環の内側に油土が詰まっており、対物側、接眼側のカバーの裏側にも充填されていました。特に対物側の飾り環のねじは硬く固着していて、粘っこく特殊なレンチを準備して(ライカ関連のショップで適当なサイズのものを入手できました)、浸透性のオイルとヒートガン(熱くしすぎるとレンズを貼り合わせているバルサムが溶ける場合があります)を慎重に使用してやっと回すことができました。

 

中心軸の接眼側の部品は眼幅目盛板を外し、さらに対物側から中心軸の抜け止めのビスを外して容易に分解できました。

 

ボディーを固定してレンチで対物側飾り環を取り外します。内側にべったりと油土が詰まっていました。

 

対物レンズを厚紙で保護しています。プリズムにはカビがあります。

 

カバーが外れたボディー、ここまで分解できると作業も先が見えてきます。

 

左右の鏡筒に分けて部品を整理しました。小さなセットビスが多く無くさないように気を付けています。部品は黄銅製が多く赤っぽい下処理がされています。

 

1934年11月のカタログにあるBinuxitの仕様、ネットで調べたらこの双眼鏡は1927年~1962年まで生産されたそうです。

 

同じカタログにある断面図、この図を見ると接眼レンズの構成は対物レンズ側から2-2-2の3群6枚構成です。当時の競合機種で有名なZeissのDeltrintem 8x30はH.Erfleの設計した広視界接眼レンズを使用した双眼鏡で1920年に生産開始され、2-1-2、3群5枚構成です。






 

2024/01/30 木星

久しぶりで木星を撮りました。夕方既に南中に近く高度が高いです。Windyでは少し良さそうに思いましたが眼視では縞が二本しか見えません。パソコン画面でピントの山がつかめません。冬のボケボケの気流、雲の合間の撮影でした。

2024-01-30-0922_4 (UT)       Seeing: 2/10   Trans: 4/5              

450mm  f4.5  fl 2040mm(80.3”) Newtonian (Dobsonian) 5x Powermate  ZWO ASI585MC   (with Baader UV/ IR cut filter, ADC)   7.6 ms, 60sec x4, 50% frames stack  (derotation 4 images)  

 

動画で見る気流の状態です。

容量が50MBあり少し時間がかかります。

 

比較のため昨年夏、8月26日の24インチ望遠鏡での木星です。こんな気流が待ちどうしいです。

容量が50MBあり少し時間がかかります。