星めぐりの道具箱

望遠鏡作り、双眼鏡、惑星撮影など

副鏡オフセット量

副鏡の配置ですが、周辺光量を配慮し図のように副鏡の中心(楕円の中心)を主鏡の光軸から少しずらした配置にしました。現状のオフセット量は7.5mmで製作しています。望遠鏡製作の本やネット上には参考になる計算式がいくつか載っていますが、望遠鏡製作のバイブル本として、Jean Texereaw著の「How to Make a Telescope」という本がとても参考になります。この中には放物面鏡の深さまで配慮した計算式が載っています(第2版、P376)。この式で計算するのが正確と思い副鏡オフセット量を計算し直してみました。

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式は以下になります。

各記号の意味と計算に使用した値(単位mm)は以下です。

a:副鏡短径、Δ:副鏡オフセット量、D;主鏡有効径(604)、f:主鏡焦点距離(2433.32)、d:主鏡焦点位置での像径(20)、l:焦点引き出し量(430)、e:主鏡の中心の深さ

まず主鏡の凹み深さeを求めます。(D/2)^2/4f に数値を代入してe=9.3703mm、この値を以下の式に代入してaとΔを求めました。

a=L/M+L/N 、Δ=(L/M-L/N)/2

ここで L=d(f-e)+l(D-d)、M=2(f-e)-(D-d)、N=2(f-e)+(D-d)

e=r^2/2R   =(D/2)^2/4f

・副鏡の短径、a=125.4mm

・副鏡のオフセット量、Δ=7.55mm

 

この値からすると短径が少し足りません(現状の有効は122.5mm)。

焦点位置での像径を15mmにして計算し直してみました。

・副鏡の短径、a=121.3mm

・副鏡のオフセット量、Δ=7.37mm

 

像径の値によって微妙に変わります。

 

 

 

主鏡側面の押さえ

主鏡側面の押さえですが、フェルト付きのアジャスターボルトを取り付けていました。ネジと一緒に回ってしまうのと厚さがあってケーブルで吊る側の2カ所には設けられないのでチャンネル材にコルク板を貼って回り止め構造にしたものを自作しました。組立・輸送時には4カ所で押さえて鏡が動かないようにします。観望の際には当てる程度にして位置を決め、鏡に圧迫を加えないようにする考えです。

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90°間隔で4カ所に設けました。

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主鏡の面取り部で押さえる半円形の抜け止めは少し削って直に接しない寸法にしました。下側の2カ所はケーブルを介して、上側の2カ所は直に主鏡側面を押さえます。

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押さえ部品の構造です。加工の容易な真鍮製のM8ボルトの中心にM3のタップ穴を加工し、皿ねじでチャンネル材の部品を隙間を設けて回転自由に固定しています。この上にコルク板を貼っています。

 

ファインダーの取り付け

ファインダーには18インチドブソニアンで使っている 8x50mm 正立像のものを流用します。鏡筒が丸筒だと都合良く傾くのですが、フォーカサーボードに取り付ける際にそのままだと接眼部と重なってしまうので30°傾けるための台座を作りました。ファインダーを覗く際に高度の高い天体では不利かもしれません。

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写真で見ての通りですが、アルミのチャンネル材(60×30×t3)を斜めに切り落として工作しました。

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ファインダー取り付け部はビクセン製のアリ溝台座です。

ファーストライト

明けましておめでとうございます。昨年末のクリスマスには米国のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James Webb Space Telescope)の打ち上げが成功しました。これからサンシールドの展開、口径6.5mの主鏡の展開など複雑な工程が続きますが、どんな新しい発見が成されるのかと想像するとわくわくします。

24インチファーストライト、昨年末までにと思っていましたが、昨日やっと無風の快晴に恵まれました。ここまでは良かったのですが、星像はヒョウタン形に歪んでいて他にも問題が続出です。

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ファーストライトは木星

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組立てた状態で初めて主鏡カバーを外しました。

 

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接眼部の反対側には遮光と光軸出しのために仮の遮光板を取り付けました。

 

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主鏡運搬箱はミラーボックスの裏側から4隅をつまみ(ねじ)で固定しました。

 

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高度軸のテフロン板は面積を増やし(36mm×115mm 4箇所)ました。回転は少し軽くなりました。

 

ファーストライトで問題続出

1.星像がヒョウタン形に歪んでいる。

 とりあえず約130倍のアイピースを使いました。ファインダーがないので明るい木星の導入にもひと苦労。焦点位置はほぼ合っています。ありゃ、りゃ、ファーストライトの木星、縞が数本見えますがぶれたように2重に見えます。4隅に設けた抜け止めが主鏡を圧迫?

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下側2カ所には発泡ゴム板でワイヤーケーブルの抜け止めを設けたのですがこれが影響?、副鏡の裏側の綿の詰めすぎ?、いろいろ考えられますが主鏡支持構造から確認と思います。18インチドブソ二アンではナイロンベルトで主鏡を吊りましたがファーストライトは順調でした。24インチの主鏡は41mm厚でかなり薄いので圧迫の影響が出やすい?、ミラーボックスに主鏡運搬箱を組み込む構造にしましたがこれが問題となると大きな構造変更が必要かもしれません。

2.光軸ずれと副鏡の振動

 姿勢差による光軸ずれの確認をレーザーコリメーターで行いました。

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始めに20°ほどの低い姿勢でレーザーのスポットを主鏡センターに合わせ鏡筒を天頂近くに向けると数ミリずれてきます。副鏡がスパイダーに対して片持ち構造なので構造上と思いますが大きすぎます。羽根の厚さ0.3mmは薄すぎたようです。反対側にカウンターウエイトを設ける案もありますが現実的ではありません。AstroSystems社のホームページには短径5インチ斜鏡用の羽根は厚さ0.048"(約1.2mm)とありかなり厚くなっています。もうひとつは振動です。こちらも予想されたことですが光軸回りの振動が出やすくなかなか収まりません。残念ですが羽根を厚くする必要がありそうです。

3.回転の重さ

 高度軸、方位軸廻りの回転の重さ、実用できますがもう少し軽くしたい。

4.スペース

 これが一番大きな問題。実際に形になると、小さな我が家のベランダには大きさがものすごい。組立て分解も大変、観測室が必要な大きさです。

副鏡の面精度

11月11日に書いたAntares Optics製の副鏡の記事に載せたZygo干渉計による測定データですが、Surface/Wavefrontとあり面精度の値なのか、透過波面精度の値なのかが気になっていました。その後友人の詳しい方に教えてもらったのですが、反射鏡の測定の場合には波面誤差が2倍出ることを避け面精度を直接表示するために、Scale Facterを0.5にするとのことです。測定データのScale Facterは0.5となっているので副鏡の面精度はλ/20のようです。望遠鏡に組み立てた際の透過波面精度としては45°傾けて設置されるので√2倍に伸びて√2×λ/20=λ/14.1 になり、さらにZygo干渉計では632.8nmの波長で使われることが多いので可視光(明所視)の中心波長555nmに換算するとλ/14.1は632.8/555×λ/14.1→λ/12.4になりそうです。十分な精度だと思います。

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全体の仮組み立て

今朝は全体を仮組みして動きやバランスを確認しました。ベランダで行いましたがやはり大きい。はみ出してしまいそう。

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主鏡運搬箱の組み込みですが重いのでとりあえずレール代わりの木材を左右に敷いてその上に載せ、スライドさせて組み立てました。もう少し作業がスムースにできるように改善したいです。

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主鏡を載せた後にトラス下枠を載せました。

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トラス支柱を組み立てた後、上トラス枠を載せました。やはり踏み台が必要になります。

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ついに組みあがりました。大きいのでカメラの視界からはみ出ました。高度軸周りのバランスは摩擦が大きいためもあるのかもしれませんが問題はありません。気になっていた回転の重さに関して、方位軸は良い感じですが、高度軸は少し重いです。方位軸に比べると荷重に対するテフロン板の面積はかなり小さいのでテフロン板の面積を増やして試してみたいです。

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今朝は冬晴れで富士山がきれいです。

 

副鏡の組み込み

昨日副鏡をホルダーに組み込みました。ホルダーはAstroSystems社から購入した短径5インチ(127mm)用のものです。発泡樹脂のサポート材とfiber fill(綿)を詰めて副鏡を保持します。

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ベースの素材は樹脂製ですがねじ部には黄銅のインサートが設けてあります。下側の溝はヒーターを使う場合にケーブルを通すためと思います。

 

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ホルダーはアルミ板製で内側全周に厚さ2mmの抜け止めが設けらています。傷防止のために抜け止めの内側には120°間隔で3か所に2mm×30mmのフェルトを貼りました。この際に素手で作業したのがいけなかったようでフェルトの当たった鏡の周辺に汚れがついてしまいました。フェルトを含めてきれいに拭いてから組み込みをやり直しました。

 

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サポート材は両面テープで固定しました。

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綿の詰め加減は鏡がガタつかない程度に詰めて様子をみます。

 

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組み込み完了。副鏡の短径は127mmでしたが、ホルダーに組み込んだので抜け止めの厚さ分が小さくなりました。有効な短径は実測122.5mmです。少し大きめの副鏡にしておいてよかったです。