星めぐりの道具箱

望遠鏡作り、双眼鏡、惑星撮影など

主鏡支持の検討

David Lewisさんが作られたPlopという解析ソフトが公開されています。各種の支持方法と部品製作に必要な具体的な配置寸法を計算することができありがたいです。

Plop

Plopを使用して24インチ主鏡の光軸方向背面からのフローテーション支持を以下の仕様で解析しました。

外径:24インチ(609.6mm)、口径比:4、厚さ:1.6インチ(40.64mm)、中心遮蔽:4インチ(101.6mm)、材質:石英

18インチドブソニアンでは、18点支持としました。この方が構造が簡単で部品数も少なく作り易いです。しかし24インチは主鏡の厚さが41mmと薄いため解析上はより高精度に保持できる27点支持を選びました。

 中心遮蔽は副鏡の大きさで選択します。入手した副鏡は短径5インチですが、最小の副鏡を使う可能性も想定し短径4インチで解析しました。コンタ図の中央の赤い部分が中心遮蔽部で周辺よりも凹んでいて実際には副鏡の陰になり使用されない部分です。

 

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Plopによる27点支持配置図

 

 

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コンタ図

 

 理想的な放物面が高度角0度(天頂視)で背面から27点で均等な圧力で支持した際にどれだけ変形するかの解析です。27点支持で、p-v  7.068e-06(mm)となりました。可視光の波長555nmだとp-v  λ/78.5になります。試しに18点支持の場合にはp-v 1.354e-05(mm)になり理想的に構造を作ることができれば27点支持の方が高精度です。高度角が変わり主鏡が傾いた場合には側面からの支持の影響が出ますが背面にかかる力は減るので背面からの影響による変形はより小さくなります。27点支持構造は主鏡の自重が23kgとすると、23/27で一点当たり850gほどの受け持ちになります。支持構造の部品が2次元だけでなく鏡筒の高度角が変わり3次元的に傾いたときにバランスがとれて各支持点が均一の負荷で支持できる必要があります。実際に作り始めるとバランスをとれない部品もあり修正も必要になりそうです。

主鏡の側面からの支持に関しては、従来のドブソニアンでは、ベルトによるスリング方式が多く用いられました。私の18インチでは幅40mmのナイロンベルトで厚さ2インチの主鏡を吊っています。しかし最近、ある程度大きなドブソニアンでは金属のワイヤーで主鏡の重心位置を吊るか、重力方向に対して左右4か所(45°間隔、垂直から22.5°及び67.5°)に設けたローラーで支持する方式を採用する例が多いです。

ベルギーのアマチュア天文家のRobert Houdartさんが口径1100mmのドブソニアンを製作され、その制作過程と作られた解析ソフトをホームページに公開しています。側面からの支持方法についてはMirror Edge Support Calculator がとても参考になりました。

Mirror Edge Support Calculator

鏡筒が水平になった場合の側面支持による主鏡の変形量を解析することができます。24インチ主鏡を解析した値は以下のようになりました。いずれもミラーの重心位置で吊るか、支持する場合です。

・180°ケーブルスリング:RMS 2.0nm

・45°ウィッフルツリー:RMS 2.3nm

・90°間隔単純支持:RMS 4.2nm

例として径600mm厚さ50mm、F3.3のミラーの変形量が計算されています。180°ケーブルスリングで重心位置で支持の場合に1.8nmの変形が重心から2.5mm上側で支持する場合には6.6nmになっています。重心の位置での支持がとても重要とのことです。

ケーブルスリングで支持する場合に重力に対して横方向の拘束がないので動かないようになんらかの工夫をする必要があります。24インチ主鏡の支持方法ですが、ミラーボックスの構造の都合からケーブルスリングを考えています。

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